林家木久三(木久扇)師匠の十八番、「昭和芸能史」、昭和の落語史に残る傑作である。大師匠正蔵の昔話を取り混ぜながら、荻窪の映画館の話に始まり、大河内伝次郎の遠山の金さんが長崎まで出かけて行っても台詞がアヤヤオヨヨだったり、多羅尾伴内(七つの顔を持つ男)の片岡千恵蔵が二等身で、拳銃を突きつけられても「おっと」しか言わなかったり、懐かしい顔が脳裏をよぎって楽しい。
その、大河内伝次郎の「アヤヤオヨヨ」っぷりを表題の三万両五十三次のモノクロ映画で確認出来た。轟夕起子と折原啓子をヒロインに迎えた、現金輸送の用心棒が活躍する、ちょっと心温まる映画である。1952年なので、もう、GHQからちゃんばらが解禁されていた時代なのだろうか、それとも、これも「民主主義映画」の一つなのか? マーロンブランドの米国国策映画「八月十五夜の茶屋」(1956)よりは未だずっと古い。